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動画: USDEC エクスポート・エクスチェンジ
米国の乳製品市場の現状と展望を紹介するビデオシリーズ
動画: USDEC エクスポート・エクスチェンジ (2021年6月)
エクスポート・エクスチェンジへようこそ。市場に関する最新情報の後、ウィリアムから 米国貿易の現状と影響についてご説明致します。
2021年第1四半期は堅調に推移し乳固形分換算で約8%増加しました。各国の経済が回復するに従い 乳製品の需要も増加しています。ワクチン接種が進み人々の外出や 移動の自由度が増すにつれて、年間を通して堅調な需要が見込まれています。乳製品の需要は回復基調をたどり、米国の生乳生産量は好調に推移しており、月迄に2.5%増加しています。米国では乳牛頭数が増加し、生乳生産量が増加しています。2020年には、約93,000頭乳牛が増加し、今年は4月までに48,000頭増加しています。これに加え、継続的な効率化により、今年は堅調な乳生産が見込まれています。これは輸出可能な製品が十分であることを意味します。
ニュージーランドでは、2020/21年の 生乳生産量は今のところ堅調です。4月にかけての生乳生産量は前年同期比6.4%増の 770万トンに達しました。ただ、好調な伸びの一方、シーズンはすでに終盤です。年内のトータルでの生乳生産量増加は それほど大きくないと予想され、従来の生産量と同等の水準になるでしょう。2021/22年シーズンの開始である第3四半期に向けて、牧草の生育状況を注視していく必要があります。
EUの生乳生産量については、若干の増加傾向にあるものの、3月迄0.3%の減少となり、厳しい状況です。アイルランドやポーランドなど生産量が少ない国で、大きく生乳生産量の増加が見られましたが、逆にドイツやフランスのような生産が 大きい国での伸びが限定的であり、EUの生乳生産量は、2021年下半期で 大幅な伸びはないと予想されます。
次に米国の乳製品の状況ですが、バターは在庫が高水準で推移しています。外食産業の回復による内需の拡大と 輸出拡大の影響は、若干程度にとどまりました。在庫水準は比較的高く、外食産業の再開に 向けた需要も落ち着いたようです。これにより米国産バターが 世界で優位性を持つことになり、輸出量は過去最大となりました。輸出は過去最高の水準でしたが、国内市場では未だ在庫が多く、 年内の価格上昇の幅は限定的とみられます。
米国産脱脂粉乳の輸出量は、年初から好調に推移しています。これに加え、同時期に内需が拡大したことで、在庫水準が大幅に下がりました。今年2月の平均在庫は16万トンと高水準にあったものの 12%減少し、4月には14万1,000トンまで下がりました。米国の脱脂粉乳市場は年初から需給が逼迫し、価格が上昇しています。世界的な需要増を背景に 年内は需給の逼迫が続くものと予想されます。
2020年に激動した米国のチーズ市場は 現在安定的に推移しています。コロナ後の外食産業の再開で国内需要が増加しましたが、家庭用の消費は抑えられ小売向けは減少しました。ただ、小売りが減っても外食産業向けへの回復により、チーズ市場は活況を呈しています。国内でも国外でも需要は高いのですが、新規での生産もあり、市場のバランスは保たれています。
世界的なホエイ市場の拡大は、昨年来の中国が 大きな理由で、2021年も同様の傾向が見られます。2021年第1四半期、米国から中国へのホエイ輸出量は128%増加、EUから中国へのホエイ輸出量は37%増加、ベラルーシから中国へは120%増加しました。米国の生産量は需要に追いつかず、在庫は減少しています。今年第1四半期の米国の在庫状況は、ここ数年で最も低い水準です。しかし、チーズの生産が本格化するに従い、ホエイの生産量も増加すると予想されます。また、中国からの需要は年末にかけて 継続する見込みでありますが、昨年と同じような伸びが今年下半期にかけて 見られるということはないでしょう。米国のホエイ増産と中国の需要の伸びが ピークに達したことを受けて、今年下半期にはホエイ市場における需給の 逼迫状況に歯止めがかかるとみられます。
次に、輸出入や配送環境を取り巻く現状の詳細についてです。これについてはウィリアムから説明致します。
ありがとう。ここからは、世界中で発生している運送費の 高騰と配送遅延に焦点を当てます。
このような遅延や費用の増加は、米国産の乳製品を含む 世界中で輸出入される商品に影響を与えています。なぜこうした状況が起きているのか、今後の影響に目を向けます。まず背景から説明します。これは、多くの小さな要因が重なっています。例えば、スエズ運河のコンテナ船立ち往生、あるいはコンテナやトラック、その他の装備が不足している事。このような多くの小規模な要因が 遅延に拍車をかけています。ただ、米国においては遅延の背景として ある根本的な原因が挙げられます。それは、コロナ禍での米国の生活様式の変化です。
基本的に皆が自宅にとどまり、互いに ソーシャル・ディスタンスを保つ生活で、外食やジム、旅行などへの出費は控えられましたが、フィットネス用品、アウトドア用品、在宅勤務環境等を目的とした出費は増えました。こうした製品の多くは米国の製品ではなく、海外から調達する事が多いのです。その結果米国では、輸入品の需要が急増しました。西海岸のカリフォルニアを中心に、米国の港は貨物船で溢れました。しかしコロナの影響で、港湾労働者を確保することが困難になってしまい、パンデミックの最中に着いたコンテナの荷下ろしに 多大な時間がかかりました。その結果、船舶の荷揚げや出航が 進まなくなったのです。
またこの影響で海外への 運送費が高騰しています。この動画の収録時点では、海外への運送費は 昨年同時期と比べてほぼ4倍の水準となっています。運送費の値上げは一律ではありません。アジアから米国へ向けた運送費は、その逆より大きく値上がりしています。運送費の分析を行うFreightosの調査によると、東アジアから米国西海岸へ向けた運送費の平均は、米国から東アジアへ向けた価格の6倍以上にのぼります。
これにより米国の輸出事業者は、帰りのコンテナの 積み込みを待たずに、荷物の入ってないコンテナだけを返送し、日数を短縮した方が収益性に優れる 状況が生まれました。これは国際的な問題となっています。世界のコンテナ船の定時運航に対する信頼性という点では、2020年半ばから急激に悪化しています。予定通りに出航しているコンテナ船の 割合は約40%となっています。そして、運搬に要する時間と価格が急騰しています。
これは、輸出企業がコンテナ船の予約を争って 確保しようとしているのが原因です。米国の輸出事業者は、お客様に製品を出来る限り早く届けるための努力をしています。現在、米国からの輸出は、カリフォルニア州北部、太平洋北西部、東海岸、メキシコ湾等で 増加傾向にあります。これは、海外輸出事業者が出港元を 多様化させていることが背景にあります。一方2020年第4四半期から今年前半にかけての 遅延を引き起こす中心地となった カリフォルニア州南部からの輸出の比率は 減少傾向にあります。
これは良いニュースです。多様化が進んでいるという事です。しかし、港外にはまだ多くの貨物船が停泊しています。輸出事業者は荷物のないコンテナの返送を続けているため、予約の変更やキャンセルが発生しています。今後の展望については、米国におけるワクチン接種率が 増加傾向にある点が非常に明るい材料と考えられます。米国は変わっています。これは、前述の外食、旅行、イベントなどへの消費を 増やしている、若しくは増やしたい人が 増加傾向にあることを示しています。これにより現在の貨物船の滞りを打開し、通常の輸出入環境を整えることが期待されます。しかし、それが実現できる見通しは、まだわかりません。
サプライヤーとともに、こうした遅延状況を確認し、オーダーに応じた詳細な調整を行う必要があります。遅延状況はさまざまで、米国内だけではありません。これらの国際的な課題が与える影響を見極めるためには、米国のサプライヤーと連携を密にすることが重要になります。何かご不明な点やご質問があれば、遠慮なくご連絡ください。
今月は以上となります。お体にお気を付けてお過ごしください。ありがとうございました。
動画: USDEC エクスポート・エクスチェンジ (2021年3月)
エクスポート・エクスチェンジへようこそ。四半期ごとの配信に切り替えたため、前回の動画から少しお時間を頂戴しました。乳製品市場には多くの変化がありました。スティーヴンと共に、市場動向、今後の展望についてご説明致します。
現状を確認し振り返ってみましょう。GDTでの出来事に、関心を持っていることと思います。ここ数ヶ月、価格は緩やかな伸びでしたが、3月2日の入札は急騰しました。それがいつ起こったかは、このチャートを見れば一目瞭然です。急騰しています。オークションでは、全脂粉乳が21%、バターが14%、AMFが7%それぞれ上昇し、15%の上昇となりました。指数は2014年以来の高水準となりました。3月16日の入札では、WMPとバターが若干下落し弱含みでした。しかし、取引量が増加傾向にあったので、意外ではありません。市場は需給が逼迫しており、価格も昨年同期に比べて割高な水準にあります。
では、市場の動向はどうでしょうか?これは重要な意味を持ちます。なぜ価格が上昇しているのか、持続性があるのかを把握することは重要です。二つの要点を指摘します。1つ目をご説明して、スティーヴンに代わります。
今年の価格上昇の主要因の1つ目は、2013年と同じく中国によるものです。中国は単一国として世界最大の乳製品輸入国であり、国内需要も旺盛です。3月2日の入札では、中国が一番の購買先である北アジア地区が、WMPの75%、SMPの71%を落札しました。3月16日の入札も、需要が高く供給が足りませんでした。結果、価格は急激に上昇しました。貿易統計においても確認できます。中国向け輸出は、2020年下半期の動向を上回るペースで推移しています。他の国々は、第3四半期後半から第4四半期にかけて貿易が下降傾向に転じています。
中国が大量購入している理由は色々あります。主要因は国内需要が堅調に推移していることです。中国の消費者がコロナ禍以前に比べて乳製品に強い購買意欲を示すなか、在庫は全脂粉乳と脱脂粉乳のいずれも平年並みの水準が続いています。輸入量は増えていますが、需要も旺盛なのです。一方、中国の乳価は、この図にあるように過去の水準に比べて高止まりしています。つまり、価格が上昇傾向でも、需要が旺盛であれば購入が増えても合理的なのです。
しかし、「中国の需要」は理由の1つ目です。スティーヴンが2つ目の要因である供給面を説明致します。
ありがとう。EUとニュージーランドの生乳生産量は、米国の2020年のような伸びを示していません。2020年の米国は1.76%増となった一方、EUは0.81%増、ニュージーランドは0.09%増にとどまりました。
ニュージーランドに焦点をあてます。ニュージーランドの生乳生産は放牧に大きく左右されます。そのため、牧草の生育を支える天候に大きく影響を受けます。ニュージーランドは、干ばつや豪雨など生産上の困難に直面し、牧草の生育に悪影響があり、2020年の生乳生産量はわずか0.09%とほぼ横ばいでした。2021年上半期にかけても目立った伸びは見られていません。今後、ニュージーランドの生産シーズンは南半球が冷え込む5月末頃に終わりを迎えます。ニュージーランドは生産量が不足している状態にあります。中国における需要が例年以上の勢いで推移する限り、引き続き逼迫傾向が見込まれます。
EUもニュージーランドと同様、2020年に天候が生産量に悪影響を及ぼしました。EUの昨年の生乳生産量も、0.81%増とそれほど大きなものではありませんでした。EU主要生産国(ドイツ・フランス)は、昨年第4四半期の寒波が減産要因となりました。ドイツの生乳生産量は2020年には0.05%の増加にとどまり、第4四半期には0.75%の減少となりました。同様に、フランスは昨年全体で0.25%増加したものの、第4四半期には0.56%減となりました。この傾向は2021年の上半期も続いており、生産量は減少傾向にあります。
しかし気温が暖かくなっており、春シーズンの好況を受け生産量は持ち直し、昨年の水準まで回復すると予想されます。ただ、今年上半期に生乳生産量の大幅な伸びは見込めず、やや減少するか横ばいになると予想されています。つまり、EUは生乳生産量がそれほど好調ではなく、需給逼迫が続くものと思われます。また、ニュージーランドと同様、中国の需要が高水準を維持する限り、EUは引き続き需給逼迫に直面することになります。
最後に、米国についてです。米国、ニュージーランド、EUの2020年の輸出量は約820万トン(乳固形分)に達しました。総輸出量(乳固形分)の約70~80%に相当します。ニュージーランドとEUが生産減に苦しんでいるなか、主要な乳製品輸出国で、米国は唯一生産面で苦境に陥っていません。現在、米国の価格競争力が高いことを考えれば、輸出量を増やすことができます。米国の輸出にとって障害となっているものは、サプライチェーンの制約と、物流上の支障であります。これは2021年下半期には緩和され、製品の流動性は改善されると予想されます。
それと長期的な視点ですが、ニュージーランド、EUともに規制の影響が強くなり、環境問題への取り組みが酪農産業の発展を妨げることになると予想されます。ニュージーランドでは、水に関する規制が乳牛の生育を抑制しており、EUでも持続可能性への取り組みから生じる影響が、乳牛の生育を妨げる可能性があります。このため、ニュージーランドとEUの酪農産業は、生産効率の向上による1頭当たりの生産量増加が大きなカギとなります。世界的な需要が増大するなか、乳製品需要の増大に対応する選択肢として、米国が最も有望視されています。
今月は以上となります。何かコメントや質問があれば、遠慮なくご連絡ください。次回またお会いしましょう。ありがとうございました。